ブラジリアン柔術の帯は、他の武道の帯と比べて昇格が難しく、それゆえに価値があるという話をよく聞きます。柔術界の人間もよくその事を内外に話しています。しかし私はそんなこと一度も思ったことはない。こんな話を昨年末の授与式で話しました。
あとで考えると、一度もないというのはちょっと大袈裟でした。今は全く思っていないというだけで、初期の頃、自分が黒帯になった頃くらいまでは確かにそう思っていたかもしれません。
実際、私が黒帯になった時点では、国内に黒帯は中井祐樹先生と吉岡大さんと私の3人しか存在しなかったわけで、狭き門であったことは間違いないです。
そして今のように国内で当たり前のように黒帯が取得できるような環境はなく、海外に出て認められなければ黒帯になる方法はありませんでした。そういった時代背景も大きく影響していたと思います。
先の見えない渦中にいたあの頃を思い出すと、今もたまに夢でうなされることがあります(苦笑)。そして、連盟において国内の環境を整備した2007年以降は、事実上そのような心配はなくなりました。ただし、それと同時に一つの課題も生まれました。
先生がある日「よし、お前は◯帯だ」と言って個人の一存で認定できる帯に、これからの時代、果たしてどのような価値を持たせることが出来るのだろうかと。
柔術人口における黒帯比率は不可逆的に高まり続け、”最も多い帯が黒帯”という時代がすぐに来てしまうわけです。その環境を前提とした価値づくりを、今からはじめておかなければ遅いと思いました。この課題と自分なりに長らく向き合ってきました
そして2009年、それまでに私の中で醸成された、あるいは慣習となっていた帯の昇格基準を精査し、まとめあげ、自分の言葉で表現してみました。それをウェブサイトに掲載しました。
私にはブラジリアン柔術の帯の価値を守ることは出来ませんし、そのような立場にもいません。私にできることはシンプルで、トライフォースの帯の価値を守ることのみです。
その範疇においては、私は帯の価値を守るだけでなく高めることも出来るはずです。みなさんが巻いているトライフォースの帯の価値を高めるための帯制度を、今後も発展させていかなければならない。そう考えています。