試みの柔術地平線2「セルゲイ・ベログラゾフ」

ファビオ・グージェウのレアな教則本。リオデジャネイロの路上のキオスクで売られているのを偶然見つけて購入した

現役時代、私は23時頃に道場をあとにし、そこから石川さんとサイゼリヤで飯を食い、朝方5時頃にようやく就寝し、昼12時に起きてパラエストラ昼柔術の13時からの練習へ向かう、というサイクルを4年ほど繰り返した時期がある。

昼から夜までずっと柔術の練習や指導をしていると、深夜1時くらいからがようやく自分の時間となる。これは職業柔術家あるあるではないだろうか。

1人の時間になると、まず録りためていたビデオを見ていた。当時は「ガキの使い」、「太田光の私が総理になったら」、「細木数子のズバリ言うわよ」等が好きだった。それらを消化したあとはテレ東の外国の通販番組を永遠に見ていた。

それも一段落したら、朝方までは柔術の研究だ。といっても資料は限られていた。柔術の資料は、海外遠征の度にバックナンバーを大量購入しておいたTATAMEやグレイシーマガジンが重宝していた。そこに少しだけ載っているテクニックコーナーの切り抜きがメインで、それらをスクラップする作業も日課だった。

その他は、国会図書館で探し出してコピー&スクラップしていた、古流柔術や古い柔道の資料ばかりだ。高専柔道の真髄なども、今でこそ復刻版が手に入るが、当時は国会図書館で全てコピーするしか手に入れる方法はなかった。

そうやって自分で集めたあらゆる資料を読み込み、夜な夜なノートにまとめていた。そして静かに目を瞑りイメージトレーニングをするわけだ。イメージトレーニングをしていると全身が汗だくになる。人はスクワット2000回やらなくても、シャツはびちょびちょになり、額から汗がこぼれ落ちることを知った。

柔術系のVHSのダビングも徐々に出回り始めた。初期ではカゼカ・ムニエスとファービオ・グージェウの教則が、多くの柔術家にとっての聖典だったのではないか。

教則の元祖ともいえるホリオン&ホイスの教則ビデオは、1本1万円くらいして、当時は購入するお金がなかった。海外通販になるので購入方法もよく分からなかった。かなり後になってからこれらを視る機会に恵まれた。

そしてセルゲイ・ベログラゾフの教則ビデオが思い出深い。日本ではあまり知られていないが、歴史に残る偉大なレスラーだ。トオルさんが貸してくれたビデオをダビングしたのだが、全編ロシア語と英語の同時音声で、収録時間が12時間くらいの超大作だった。

眠い目をこすりながらそれを見続けることはとてつもなくしんどかった。眠くなるなんてもんじゃない。夢の中までロシア語が出てきた。しかし毎日がんばって見続けてノートに技を書き出した。

結局、柔術に役立ちそうなものは何でも漁って見ていた。そんな時代だった。

ファビオ教則本の中身。もちろん全編ポルトガル語。

私が視ていたセルゲイの教則は、今ではYouTubeで視ることができる。

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