「バーリトゥード 格闘大国ブラジル写真紀行」
1日で一気に読み切ってしまいました。近年で最も記憶に残る書となりました。
私にとって井賀孝は、尊敬する先輩であり、友人であり、柔術の師弟でもあります。そのことはもちろん関係あるでしょう。
私の知らなかった井賀さんのエピソード、葛藤、苦しみ、そして純粋な気持ちが伝わり、感動が胸を貫きました。正直泣きそうになりました。
感想を書きたいのですが安易に書けそうもありません。
ブラジルは、私自身も過去7回赴き、修行の為に1年間滞在した地であります。あの日々が夢のような出来事に思える時もあります。
人生で最も濃厚な時間を過ごしたがゆえに、その”抜け殻感”を引きずっている自分が今もどこかに居ます。井賀さんの姿に自分の足跡を投影せずには居られませんでした。
柔術修行日記としても見どころが満載です。ベレンのコンデ・コマの墓参エピソードや、アカデミー巡りに関する記述は、日本の柔術愛好家にとって貴重な資料になると思います。
トライフォースや早川の名前だけなく、芝本の名前まで出て来て、日本とブラジルの柔術シーンの比較などにかなりのページが割かれています。柔術家にとっても必見の書かと。
それらの身内の話を全てを差し引いても、純粋なルポタージュとして、写真集として、ブラジルを扱った書としては相当コアな物であることは間違いないと思います。見方を変えればこれは冒険の書です。中年と化した我々のようなおっさんにもう一度冒険心を奮い立たせてくれます。
人間、いつからだって、なんだって始められる、行きたいところがあるなら行けばいい、どこへだって行けるはず。いつからだって冒険は可能なんだ。限界などない。人生は何でも有りなんだ。
そんなメッセージを私は受け取りました。
内容紹介
“彼の地”ブラジルで、写真家・井賀孝が闘いながら撮ったバーリトゥード15年の写真録が堂々完成。
ペケーニョ、ノゲイラ、、シウバ、ショーグン、アンデウソン、ジャカレイ、ヴェウドゥム、エリオ・グレイシー、町田嘉三――
100名超の格闘家を超至近距離から掬いあげた比類なき一冊。
なぜ、ブラジルの格闘家は強いのか?
PRIDE全盛期からUFCブラジルまで――「バーリトゥード <何でもあり> 」のリアルがここにある!!
目次
I シュートボクセとUFC――クリチバ
II ペケーニョとルタリブレ――リオ・デ・ジャネイロ
III ブラジル最北の柔術道場――ボア・ビスタ
IV コンデ・コマと町田嘉三――ベレン
V バーリトゥードを巡る旅の果てに――ブラジル2016
著者について
1970年和歌山市生まれ。写真家。
高校時代はアマチュア・ボクシングに没頭し、大学卒業後に独学で写真をはじめる。27歳のときニューヨークで出合ったブラジリアン柔術をきっかけに“闘って撮る”写真家の道を志向。その後、幾度となくブラジルへ通うなかで多くの現地格闘家と交わり、2002年に『ブラジリアン バーリトゥード』(情報センター出版局)を著す。その後、日本各地の霊山をめぐり修験道の世界に身を投じて描いた『山をはしる――1200日間山伏の旅』(亜紀書房)が各メディアで話題を集める。他著に、富士山を被写体とした写真集『不二之山』(亜紀書房)、厳選した10の山を文章で描いた『すべての山を登れ。』(淡交社)がある。
現在、大峯山などで山伏修行を続けながら日々格闘家やスポーツ選手、アーティストなどの撮影にあたり、トライフォース柔術アカデミーにて柔術の指導者としても活躍。写真誌「フォトコン」にて「井賀論。」連載中。