柔術では一つの仮説がよく唱えられています。
センスがあって最初から強い者、あるいは他競技の経験があり最初から強い者は、柔術の技をちゃんと覚えはじめると一時的に弱くなる説です。
これは私自身20年以上あらゆる生徒を指導してきて実際に感じるところでもあります。
理由を突き詰めて考えたことがあります。私の出した結論はこうです。
何も考えずに技が出る者と、何か考えてから技が出る者との差であると。
新しい技を覚えれば、その技を発動するのにコンマ何秒か遅れが出るようになります。理由は、単純に脳や体に技が染みついてないからというのもありますし、技数=選択肢が増えたからというのもあります。
最初から強い人は本能のままに動きまくっていても強いのですが、ある時にやはりどうしても壁にぶち当たります。
柔術の熟練者は、まさにその人間が本能的に行う動作や防御反応を熟知しており、それらを制することが容易にできるため、本能系ファイターはむしろ格好の餌食になってしまいます。
なのでそういった方達が一定のレベルを超えてさらに強くなりたければ、やはり柔術の技を覚えるという作業から目を背けてはなりません。
俺は弱くなったんじゃないか?と感じるのは本当に一時的な期間です。その期間さえ乗り越えればインテリジェントファイターへと生まれ変わることが約束されています。柔術の面白さはそこからです。